東京六十八景
Musical Instruments & Gear

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Musical Instruments & Gear ― 連載第10回

新しいスタジオ・モニター:ADAM A5X

2016年7月24日 
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 2010年5月に購入してから6年の間使い続けてきた白いFOSTEX PM0.4n。軽い気分でのリスニングには全く押し付けがましいところのない、良い意味で輪郭が消失し、日常生活の空気にすんなり溶け込んでしまうその音には全然不満は無かったのだけれど、ヘッドフォンで得られるような解像感をモニタースピーカーにも要求したくなり、数ヶ月前から各メーカーの手頃な価格の製品を物色していた。愛用しているSONYのヘッドフォンは輪郭を掴みやすくて大きな音で聴けるし便利だけれど、長時間装着しているとやはり耳がとても疲れるのだ。
 それにしてもしかし、ネットであちこちのユーザー・レビュー等に目を通したりしたが、音の色というものは実際に耳で見てみないと何も分からない。時間をかけて悩んだ揚げ句、1.アパートで鳴らせるギリギリのサイズ感(音量) 2.PM0.4nよりも低域が出せる事 3.値段 を考慮して「ADAM A5X」をチョイスした。
 セッティングしながら直前までPM0.4n聴いていたレディオヘッドの「Glass Eyes」を続きから再生してみたら、ボーカルが液晶モニターに貼り付いているような定位に驚き、果たしてこれは正しい音の在り方なのだろうか?と戸惑いつつ、さらに聴き続けていると、左右に振られた楽器音はボーカル引き立たせるよう、控え目に背後に立っている様子であることが分かる。全て同列平面上に対等に置かれていたPM0.4nの鳴りとは明らかに違いがあり、それぞれの楽器音の立ち位置が横のみでなく、前後にも精緻に配置されていることが見える。解像感が倍くらいにアップしたと言えばよいか。低域の鳴りもPM0.4nより断然良いのはもちろん、(残念ながら)アパートで要求される小さな音量であっても解像感・バランス感は大きく変わらない。実際のところ、アパート住まいにA5Xはオーバースペックなのだが、この低域の鳴りが欲しかったのだ。
 次に、スティーリー・ダンのアルバム『ガウチョ』から、タイトル曲「ガウチョ」を聴いてみる。この曲の5分02秒辺りには音飛びがあるのだが、ヘッドフォンだと気付くものの、これまでのPM0.4nだと音の輪郭がぼやけて馴染んでしまい、余程意識を集中させていないとこの音飛びに気付かない(リスニングとしてはその方が良いとも言えるのだが)。しかしA5Xだとクッキリと音飛びしているのが分かる。スタジオ・モニターとして十分に機能していると言える。ところで『ガウチョ』はその後も幾度かリマスタリングを経て再リリースを続けているが、音飛びは直っているのだろうか。
 ひとまず、音の前後左右の配置・個々の輪郭がとても掴みやすくなったのが嬉しくて、今日は一日中iTunesにストックしているライブラリをポップスからクラシックまで色々再生して新しい音の見え方を愉しんでいた。以前導入した「Amulech AL-9628D」との組み合わせにも満足しているし、これからはヘッドフォンを使う時間も少なくなって、耳の肉体的劣化もちょっぴり遅らせることが出来そうだ。残る問題は、音楽の為に使う時間を如何に作り出すかである。

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